フィラステレア (Filasterea)は、フィロゾアに属するクレードの1つで、ミニステリアとカプサスポラから構成されている。襟鞭毛虫類と後生動物を構成しているコアノゾアの姉妹群に当たる。元来は2008年に Kamran Shalchian-Tabrizi らの研究者によって提案された、数十種類にわたる遺伝子の系統解析に基づいた分類である。この系統解析の結果、フィラステレアは、真核生物のオピストコンタ内の襟鞭毛虫類と後生動物で構成されるクレード(コアノゾア)の姉妹グループであることが判明した。この発見は、分類群が豊富な系統の分析結果が明らかになるにつれ、立証されつつある。
学名の由来
「糸」を意味するラテン語の filum- と「星」を意味するギリシャ語の aster から学名は命名されている。学名の成り立ちから解るように、本クレードの主な共有派生形質は糸状仮足を持つことである。これら糸状仮足は、何か物体か生体に固着する為の基質粘着と餌粒子の捕食に関与している可能性がある。
系統研究
「Capsaspora owczarzaki 」と「ミニステリア・ヴィブランス」というフィラステレアの2つの種について近年分かってきた生態とその増殖の仕方は次に述べる通りである。前者は淡水性のカタツムリの体内で分離して増殖し、後者は海洋を自由に動き回り細菌を食作用しながら増殖する細菌食性生物である。「Capsaspora owczarzaki 」の完全なゲノム配列のDNAシークエンシングは決定済みであり、ミニステリア・ヴィブランスのゲノム配列は決定作業中である。比較分析により、フィラステリアは動物の単細胞生物であった頃の祖先の遺伝学的形質を解明し、後生動物の起源に関する識見を与えてくれる鍵であることが明らかになりつつある。フィラステレアの新たな種の発見を目指して行われている海洋環境での"18S rRNA "を用いたDNAバーコーディングの分析であるが、未だ発見にまで至っていない。この結果は、本クレードは自然の生態系では格別に多く存在している訳ではないかもしれないことを示唆している。
系統・分類
- 綱: フィラステレア綱 Filasterea Shalchian-Tabrizi et al. 2008年
- 目: ミニステリア目 Ministeriida Cavalier-Smith 1997年
- 科: ミニステリア科 Ministeriidae Cavalier-Smith 2008年
- 属: ミニステリア属 Ministeria Patterson et al. 1993年
- Ministeria marisola Patterson et al. 1993年
- ミニステリア・ヴィブランス Ministeria vibrans Tong 1997年
- 属: ミニステリア属 Ministeria Patterson et al. 1993年
- 科: カプサスポラ科 Capsasporidae Cavalier-Smith 2008年
- 属: カプサスポラ属 Capsaspora Hertel et al. 2002年
- Capsaspora owczarzaki Hertel et al. 2002年
- 属: Pigoraptor Tikhonenkov et al. 2017年
- Pigoraptor chileana Tikhonenkov et al. 2017年
- Pigoraptor vietnamica Tikhonenkov et al. 2017年
- 属: カプサスポラ属 Capsaspora Hertel et al. 2002年
- 科: ミニステリア科 Ministeriidae Cavalier-Smith 2008年
- 目: ミニステリア目 Ministeriida Cavalier-Smith 1997年
いくつかの研究では、カプサスポラはミニステリアよりもコアノゾアに近縁であることが判明している。
脚注

